カッシーナ独占契約の真相|ル・コルビュジエ家具の正規品とリプロダクトの違い
- Norifumi Hanada

- 12 時間前
- 読了時間: 13分

「ル・コルビュジエのLC2ソファが欲しいけれど、なぜカッシーナ製だけが正規品なの?」「ネットで見かけるリプロダクト品と何が違うの?」そんな疑問をお持ちではありませんか。
実は、カッシーナは1964年にル・コルビュジエ財団と独占ライセンス契約を結んだ唯一の企業であり、60年以上にわたって正規品を製造し続けています。しかし、なぜカッシーナだけが選ばれたのか、その歴史的背景を知る方は意外と少ないのです。
この記事では、ル・コルビュジエとカッシーナの関係性を深掘りし、正規品とリプロダクト品の決定的な違いを詳しく解説します。読み進めることで、あなたの家具選びに確かな判断基準が生まれることでしょう。
本記事のポイント
1964年独占契約の背景:ル・コルビュジエ存命中に結ばれた歴史的契約
3人のデザイナーによる共同制作:ピエール・ジャンヌレ、シャルロット・ペリアンとの協働
正規品とリプロダクトの違い:素材・製法・品質管理の具体的な差異
本物の見分け方:製造番号・刻印・証明書の確認ポイント
資産価値と買取相場:将来的な売却時の価格差
ル・コルビュジエとカッシーナ|運命的な出会いの物語
1964年、歴史を変えた独占契約
1964年、イタリアの家具メーカー・カッシーナは、ル・コルビュジエ本人とその共同制作者たちが存命中に、世界で唯一の正規製造権を取得する契約を結びました。これが「カッシーナ・イ・マエストリ・コレクション」の始まりです。
この契約は単なるビジネス上の取り決めではありませんでした。ル・コルビュジエは、イタリア企業の持つ卓越した工業技術力と品質管理能力を高く評価し、自らの作品を後世に正確に伝えるパートナーとしてカッシーナを選んだのです。
当時、金属製の家具を工業生産規模で製造できる技術を持つ企業は限られていました。カッシーナは、手工業的な小規模生産から工業生産へと発展させる技術革新を導入し、ル・コルビュジエの革新的なデザインを量産化する挑戦を受け入れました。
なぜカッシーナだけが選ばれたのか
カッシーナが選ばれた理由は3つあります。
まず、オリジナルデザインへの深い尊重です。カッシーナは、デザイナーの意図を忠実に再現することを最優先とし、コストダウンのための安易な仕様変更を一切行いませんでした。
次に、確立された生産能力です。1927年に創業したカッシーナは、戦後の高級ホテルや客船向けの家具製造で培った技術力を持っており、高品質な製品を安定供給できる体制が整っていました。
そして最も重要なのが、著作権保護への強いコミットメントです。ル・コルビュジエ財団および共同制作者の相続人たちは、模倣品の氾濫を防ぎ、デザインの文化的価値を保護できる企業を求めていました。カッシーナはこの要求に応え、製造当初から製造番号の刻印による厳格な管理体制を確立しました。
60年以上続く独占的パートナーシップ
2025年現在も、カッシーナはル・コルビュジエ財団、ピエール・ジャンヌレの相続人、シャ
ルロット・ペリアンの相続人と密接に協力し、正規品の製造を続けています。
この長期的な関係性により、カッシーナは単なる製造業者ではなく、デザインの進化にも関与しています。オリジナルの図面と試作品を綿密に研究し、現代の技術とサステナビリティの要求に応えながら、コレクションを拡大し続けているのです。
3人の天才デザイナーによる革命的コラボレーション
ル・コルビュジエ(シャルル=エデュアール・ジャンヌレ)
1887年スイス生まれのル・コルビュジエは、20世紀を代表する建築家であり、近代建築の巨匠として知られています。彼の建築哲学「住宅は住むための機械である」は、家具デザインにも貫かれ、機能性を最優先とした革新的なアプローチを生み出しました。
2016年には、彼が設計した東京・上野の国立西洋美術館を含む17の建築作品が、ユネスコ世界文化遺産に登録されています。
ピエール・ジャンヌレ(従兄弟にして生涯のパートナー)
1896年生まれのピエール・ジャンヌレは、ル・コルビュジエの従兄弟であり、1922年から共にパリのアトリエで活動しました。彼の貢献は、コルビュジエの壮大なビジョンを現実的な設計図面に落とし込む技術力にありました。
ジャンヌレは、プロジェクトの現場監理を担当し、技術的な詳細を詰める実務能力に優れていました。彼の現実主義が、コルビュジエの理想主義とバランスを取り、実現可能な家具デザインを生み出したのです。
シャルロット・ペリアン(才能を開花させた若き女性建築家)
1903年生まれのシャルロット・ペリアンは、24歳でル・コルビュジエのアトリエに加わりました。当初、コルビュジエは「ここではクッションに刺繍をするような仕事はない」と彼女を門前払いしましたが、1927年のサロン・ドートンヌで彼女が発表した金属とガラスによる前衛的な「屋根裏のバー」を見て、即座に採用を決めました。
ペリアンは、家具デザインの実質的な責任者として、LCシリーズの大部分を実現させました。1932年、コルビュジエ自身が「住宅設備の実現において、ペリアン夫人は発明性、主導性、実現力において卓越した資質を持っている。この分野における全責任は彼女にある」と手紙に記しています。
1928年、革命の始まり
1928年、3人は「住宅の室内設備」という革新的プロジェクトに取り組み、金属製家具の最初のモデルを制作しました。**LC1(バスキュラントチェア)、LC2(プチ・コンフォール)、LC3(グラン・コンフォール)、LC4(シェーズロング)**は、この年に誕生し、1929年のパリ・サロン・ドートンヌで発表されました。
これらのデザインは、当時の常識を覆すものでした。クロムメッキされた鋼管フレームと革張りのクッションという組み合わせは、機械的で冷たいという批判もありましたが、機能性と美学を融合させた新時代の家具として、たちまち世界中で成功を収めました。


正規品とリプロダクト品|決定的な5つの違い
「見た目が同じなら、15万円のリプロダクト品で十分では?」そう考える方も多いでしょう。しかし、正規品とリプロダクト品には、価格差以上の本質的な違いがあります。
1. フレームの製法|曲げと溶接の技術
カッシーナ正規品は、鋼管を単純に曲げるのではなく、特殊な溶接技術によってカーブを形成しています。この製法により、見えない部分でも一定の肉厚が保たれ、機械的強度が飛躍的に高まります。
溶接後には、長時間かけて手作業でブラッシングを行い、表面を滑らかに研磨します。このため、触れたときの質感が滑らかで、継ぎ目が完全に見えなくなるのです。
一方、リプロダクト品の多くは、鋼管をそのまま曲げる簡易的な製法を採用しています。そのため、カーブ部分の肉厚が薄くなり、長期使用での耐久性に影響が出る可能性があります。
2. クッションの構造|多層構造と羽毛の贅沢
カッシーナのLC2/LC3の最大の特徴は、クッションの多層構造にあります。
中心部には、形状を保つための硬さの異なるウレタンフォームを何層にも重ね、その表面をダクロン(高品質人工綿)と天然羽毛で覆っています。この羽毛の使用が、座った瞬間の「ボフッ」という独特の感触を生み出します。
使い込むほどに、四角いクッションが程よくふっくらと型崩れし、「焼き始めの餅」のような柔らかなフォルムになります。この経年変化こそが、正規品の証とも言えます。
対照的に、リプロダクト品は、コスト削減のためにチップウレタン(ウレタンくずを固めたもの)を使用し、羽毛を省略しているケースが大半です。そのため、座り心地が硬く、経年変化も美しくありません。
3. クロムメッキの品質|三価クロムへの転換
カッシーナは2015年、環境配慮の観点から、それまで使用していた六価クロムメッキから三価クロムメッキに全面移行しました。六価クロムは美しい仕上がりを実現できる一方、製造工程で有害廃棄物を発生させ、作業者の健康リスクもあります。三価クロムは環境負荷が低く、より安全な製造プロセスを実現しています。
このメッキは手作業で行われ、通常より厚く施されるため、長期使用でも輝きを保ち、腐食に強い特性を持ちます。
リプロダクト品のメッキは、品質にばらつきがあり、数年で剥がれや錆が発生するケースも報告されています。
4. 品質管理と製造番号|一点一点の個別管理
カッシーナの正規品には、製造当初から製造番号が刻印されています。各製品に固有の番号が付けられ、同じ番号が記載された保証書が添付されます。
これは単なる管理番号ではなく、芸術作品の認証と同じ意味を持ちます。製造年月、使用素材、製造ロットまで追跡可能な体制が整っており、万が一の不具合にも迅速に対応できます。
さらに、製品にはデザイナーのサインとカッシーナ・イ・マエストリのロゴが刻印され、これらの刻印が本物の証明となります。
リプロダクト品にはこうした管理体制がなく、製造番号もありません。
5. 素材の選定基準|妥協なき品質追求
カッシーナは革の選定において、すべての革を人の目で検査してから使用します。傷や色ムラがある部分を避け、コンピューターで最適な裁断パターンを計算することで、欠陥のない部分だけを製品に使用しています。
また、革の厚み、柔軟性、耐久性についても厳格な基準を設けており、これが何十年も使用できる品質を支えています。
リプロダクト品は、コスト重視で素材を選定するため、革の質が不均一で、早期にひび割れや色褪せが発生するリスクがあります。
本物の見分け方|5つのチェックポイント
正規品を購入する際、または中古市場で本物かどうかを判断する際には、以下のポイントを確認しましょう。
チェック1:製造番号の刻印
カッシーナ正規品には、フレームの見えにくい部分に製造番号が刻印されています。LC2/LC3の場合、通常はフレームの底面やクッション下の金属部分に刻まれています。
この番号は、付属の保証書に記載されている番号と一致している必要があります。
チェック2:デザイナーのサイン
「Le Corbusier, P. Jeanneret, Ch. Perriand」という3名の連名サインが刻印されているか確認します。これは、3人の共同制作であることを示す重要な証明です。
チェック3:カッシーナ・イ・マエストリのロゴ
カッシーナの「iMaestri」ロゴが刻印されているかチェックします。近年の製品では、フレームに「Cassina」の文字が刻印されている場合もあります。
チェック4:クッションの質感と重量
座ってみて、羽毛特有の柔らかさがあるか確認します。正規品のクッションは、リプロダクト品よりも明らかに重く、手で押したときの復元力が違います。
チェック5:溶接部分の仕上げ
フレームの曲線部分やジョイント部分を指でなぞってみてください。正規品は、継ぎ目が完全に滑らかで、段差や突起を一切感じません。
リプロダクト品は、この部分に微細な段差や粗さが残っていることが多いのです。
コルビュジエ家具の資産価値|正規品とリプロダクトの価格差
新品価格の比較
カッシーナ正規品のLC2ソファ(2人掛け)は、素材や仕様により約100万円〜200万円です。LC3(3人掛け)になると、150万円〜250万円が相場となります。
一方、リプロダクト品は、10万円〜30万円程度で購入できます。新品価格では約10分の1という大きな差があります。
中古市場での価値保持率
ここで注目すべきは、売却時の価値保持率です。
カッシーナ正規品は、状態が良ければ購入価格の30%〜50%程度で売却できます。LC2の場合、30万円〜80万円での買取が期待できます。特に、製造年が古く、メンテナンスが行き届いた「ヴィンテージ品」は、希少性から新品価格に近い価格で取引されることもあります。
一方、リプロダクト品の買取価格は、ほぼゼロに近いのが現実です。高級家具買取専門店では、リプロダクト品は買取対象外とするケースが大半で、仮に買取されても数千円〜1万円程度にしかなりません。
長期所有でのトータルコスト
仮に、カッシーナ正規品を150万円で購入し、15年後に50万円で売却した場合、実質的な負担は100万円です。年間コストは約6.7万円となります。
リプロダクト品を15万円で購入し、15年後の売却価値がゼロなら、年間コストは1万円です。
このように見ると、年間コストではリプロダクト品の方が安く見えますが、カッシーナ正規品には使用中の品質保証、メンテナンスサービス、そして何よりも本物を所有する満足感という無形の価値があります。
さらに、正規品は修理や張替えのサービスが充実しており、適切にメンテナンスすれば30年以上使用できます。リプロダクト品は、10年程度で買い替えが必要になるケースが多く、長期的なトータルコストでは正規品の方が優れている場合もあります。
リプロダクト品は違法なのか?|意匠権の期限
ここで重要な疑問が生じます。「リプロダクト品は違法なコピー商品なのか?」という点です。
意匠権の保護期間
日本の意匠法では、意匠権の保護期間は登録から最長25年です。ル・コルビュジエのLCシリーズは1928年にデザインされ、1929年に発表されました。仮に1930年に意匠登録されたとしても、1955年には保護期間が終了しています。
つまり、現在販売されているリプロダクト品の多くは、意匠権が切れた後に製造されたものであり、法的には違法ではありません。
しかし倫理的な問題は残る
ただし、カッシーナは独占的ライセンス契約に基づき、正規品としての地位を保っています。ル・コルビュジエ財団と共同制作者の相続人たちは、カッシーナだけを正規製造者と認めており、それ以外はすべて「正規品ではない」という立場です。
リプロダクト品を購入することは違法ではありませんが、デザイナーの意図を完全に再現したものではなく、品質も保証されていないという点を理解しておく必要があります。
カッシーナ製品の未来|サステナビリティへの取り組み
カッシーナは近年、**サーキュラーエコノミー(循環型経済)**の実現に向けた取り組みを強化しています。
2025年には、LC2とLC3の限定版として、リサイクルポリエステル繊維をクッション内部に使用し、フォーム材にはバイオ由来のポリオールを含むポリウレタンを採用した「durable(耐久性)バージョン」を発表しました。
これは、環境負荷を低減しながら、カッシーナが誇る品質基準を維持する試みです。正規品を選ぶことは、こうした持続可能な家具産業を支援することにもつながります。
まとめ|本物を選ぶ価値
ル・コルビュジエの家具において、カッシーナだけが正規品を製造できる理由は明確です。
1964年、デザイナー本人と共同制作者が存命中に結ばれた独占的ライセンス契約は、単なるビジネス契約ではなく、デザインの文化的価値を後世に正確に伝えるための選択でした。カッシーナは、60年以上にわたってその責任を果たし続けています。
正規品とリプロダクト品の価格差は大きいですが、その差には製法の精密さ、素材の品質、品質管理体制、アフターサービス、そして資産価値という明確な理由があります。
「家具は単なる道具ではなく、生活を共にする芸術作品である」というル・コルビュジエの哲学に共感するなら、本物を選ぶ価値は十分にあるでしょう。
実際にショールームで座り比べ、フレームの仕上げを触り、クッションの質感を確かめることをお勧めします。その違いは、カタログや写真では決して伝わらないものです。
この記事が、あなたの理想的な家具選びの一助となれば幸いです。
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